中村 中

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中村 中のニュー・アルバム『少年少女』が9月22日にリリース! “家出少女”と“不良少年”の2人を主人公に、さまざまな人物が交錯する“青春”をテーマにしたストーリーが展開される。自ら“自信作”と公言するアルバムがここに完成!!


 今作は“少年”と“少女”を軸にした、ストーリー性のある作品になっていますが、どんなきっかけからはじまっているんですか?

中村 中:ちょうどレコード会社を移籍した後のタイミングということもあって、身の回りの環境も変わり、どういうものをつくろうかと考えていたんです。それで、まだデビューしてからそれほど経ってはいないんですが、改めてスタートをするにあたって、一度どんな道のりだったのかを振り返ってみようと思ったんです。たとえば、もっと生まれてくるべき言葉があったんじゃないかとか、まだ取り組めていないサウンドづくりがあるんじゃないかとか。単純に歌を歌うこともそうですし、そういうことをやり直すというか、もっと見つめ直したいなと思って、今がいいタイミングだと思ったんです。それをやるにあたって、アイテムとして“青春”を使おうと思い、その物語というか、テーマに必要だったのが“少年”であり、“少女”だったんです。

 “青春”を象徴するものとして出てきたのが“少年”と“少女”だったと。

中村 中:正確に言うと、アイテムを“青春”に決めたのは、アルバムをつくる時に「家出少女」と「人間失格」という曲がもともとあって、それを追いかけるようにして「不良少年」ができたんです。で、この曲たちが向かいたい方向、向かおうとしている方向を見ると、“青春時代”をやり直すというか、見つめ直すテーマになるんじゃないかなと思ったんです。だから、“青春”から“少年”と“少女”が出てきたというよりは、曲に呼ばれて“青春”が出てきたという感じですね。

 今作には、今までの中村さんの曲にはあまり見られなかった新しい感じの曲が多く、中でも「独白」が印象的でした。

中村 中:「家出少女」では♪何時に帰るかなんてわからない 街では何が起こるかわからない♪と歌っているんですけど、この言葉って、それだけでアルバム全部を包み込めるくらいの言葉だと思っていて。♪街では何が起こるかわからない♪というのは、要するに街で起きるアクシデント、事件のことなんですが、それをどこかにつくっておかなければ「何に一体おびえているの?」ってなって、リアリティが薄れてしまうと思うんです。だから、アルバムをストーリーとして考えた時に、どこかに“街で起きるアクシデント”を起こしたいと思って、生まれてきたのがこの曲です。サウンドもそうですし、歌の内容も“アクシデント”っていうのを意識してつくりました。

 歌と語りが入り交じる斬新なスタイルですが、何かアクシデントを起こそうと思った時に、自然と思いついたんですか?

中村 中:そうですね、どちらかと言うとパッと思いついたというか。歌モノの曲なのに、急に語りが入ったら「なんでいきなりしゃべりはじめるんだろう?」って違和感を覚えるだろうなと思って。ミュージシャンがセッションをするような感じというか、その場のノリでつくりました。

 「旅人だもの」では、元・野狐禅の竹原ピストルさんとコラボされていますが、これはどのようなきっかけで?

中村 中:この曲は、アルバムの一番最後にデモができた曲だったんですけど、自分ひとりのパワーだけじゃなくて、別のちがうエッセンスがほしいなと思った時に、ちょうど“不良少年”みたいな人がいたなと思いついて(笑)。私がファンで、よくライヴにうかがっていたんです。誰かいないかなと考えた時に迷わず浮かんだので、お願いしました。快く「一緒にやろう」と言ってくださったのがうれしかったです。

 制作はどのような感じで進めたんですか?

中村 中:私がつくった土台に乗っかってもらう形だったんですけど、途中に私じゃ考えつかないことをやりたいなという話をしていて、それに応えてもらったり、“旅人”というくらいですから、旅をする時のエピソードを話しながらつくっていきました。どの部分を私が書いていて、どの部分を竹原さんが書いているかを探りながら、想像して聴くのも音楽の楽しみのひとつだと思うので、そうやって楽しんでもらえたらと思います。

 中村さんにとって、今作は、どんな存在なんですか?

中村 中:今回のアルバムは、1曲1曲について私が詳しく語るようなアルバムではないと思っていて。それは私が語ってしまうことで、聴き手の考えを制限してしまうような気がして。11曲それぞれの中にたくさんの入り口をつくっていて「あ、こんなところに私がいた」とか「あ、この気持ちは昔の自分だ」とか、そこかしこに聴いた人の心に触れる部分がたくさん用意してあるんですけど、私が「この曲はこうなんです」って語ってしまうと、その入り口がいくつか閉じてしまうような気がするんです。このアルバムだけじゃなく、映画や小説でもそうですけど、それは楽しみ方としてすごくもったいないなと思うので、ヒントになるような言葉は伝えても、こと細かに語るべきではないなと思っています。

 あまり先入観を持たずに聴いてもらいたいと。

中村 中:世間の方の中には、“中村 中”っていうと、私がどのように育ってきたかとか、私の体がどんな形をしているかとか、そういうバックボーン的なところに目を向けて、“苦労人”というイメージで見られることがあるようなんですが、そんなことは全然なくて。私としては何でもない言葉なのに、妙に説得力を感じてもらってしまうこともあるんです。そういうのがよい勘ちがいに作用するのはうれしいんですけど、聴き手の中にどこか浸透しきらない気がしてしまって、それがすごくもどかしく感じるんですね。だから、正直に言うと、今回は私の名前を取ってしまいたいというか、私の名前は必要ないアルバムだとも思っているんです。それは今回本当にいい作品ができたという、ある種の自信の表れなのかもしれません。

 特設サイトでは、それぞれの曲名をタイトルにしたショート・ムービーがアップされていますね。

中村 中:勝手にCMをつくっているんですけど(笑)、最終的には11曲すべてのタイトルをもとにしたCMをつくるつもりです。これに関しては、曲が持っているテーマとは全然ちがったものでやろうと思っていて、“画で見せる面白さ”というのを意識してつくりました。歌だけの世界でやろうとすると、ついシリアスになりがちなんですけど、あれも私からのメッセージで、「こんなに楽しみながらやっているんだよ」っていう表現のひとつですね。これを観て、アルバムを聴いてくれる人が「私が感動した曲でこんなにバカみたいなことをしてる。神妙な心持ちで聴かなきゃいけない気がしてたけど、そんなことないんだ」って、気持ちがほぐれてくれたらいいなと思います。

 そういう意図を含めての映像?

中村 中:あれはただ本当におふざけなので、そういう意図で撮ったわけではないです(笑)。「これくらい楽しんでるんだよ」って伝わってくれたらいいなという希望ですね。取材してくださる方や曲を聴いてくださる方みんなに言いたいんですけど、全部のことに意味を持たせてつくってないです。さっき「苦労人だと思われる」って話をしましたけど、みなさんに「すごく大きなことをやっている人だ」とか、「大きなものを抱えてる人だ」って考えられているだけで、みなさんと何にも変わりないんです。初恋で泣いた経験がない人がいないようなものですよ。しかも、同じようなことで何回もクヨクヨするし。逆に、普通すぎて申し訳ないくらいなんです。こんなに普通の人間が、みなさんの前に出て歌っていいのかしらっていうくらい。だから、すべてに意味を持たせようなんて思っていないし、ただ楽しんでやっているだけなんです。

 逆に意味を求められても困ってしまうと。

中村 中:うん。CDを聴いてくれる、CMを観て楽しんでもらう、その人たちのためのものだから、その人たち自身が意味をつけてくれるのが一番いいと思います。今作はいろいろな人が入り込める入り口をたくさん用意してあります。聴き終わった後に、それぞれの人が、作品についてああだこうだ言えるような作品が、いい作品だと私は思っているので、聴いた方それぞれの『少年少女』にしてもらいたいです。こういうことは発言したことないんですけど、今作は本当に自信作です。ぜひ手に取って聴いてもらいたいです。

 12月にはツアーが決定しましたが。

中村 中:目で観る『少年少女』がどうなるのか、私自身楽しみで。『少年少女』が立体になったらどういう風になるのだろうと、今いろいろ想像しているところです。今からこういう風になるとか、こういう風に楽しんでくださいとか、そういうことは言えないんですが、ぜひ足を運んでいただいて、楽しんでいただければなと思います。


INTERVIEW:Shinji Takemura


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●ALBUM
09.22 On Sale
『少年少女』
中村 中
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¥3,000(tax in)

コメント (2件):

  1. アルバム「少年少女」を楽しみにしていましたが、
    このインタビュー記事を読んでみて益々聴くのが楽しみになりました。

  2. 勝手にCMにはまっています。
    インタビューをみて 楽しんで作られたのがよく分かります

    「少年少女」すばらしい作品です。

    毎日聴いています♪

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