古内東子

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リアルでストレートな恋愛観、そして恋愛の普遍性を描き続ける古内東子が、3月3日、恋に落ちている時の“バラ色の感情”と相手を思う“ブルーな感情”を表現したニュー・アルバム『PURPLE』をリリース!


 3月3日に約1年半ぶりとなるニュー・アルバム『PURPLE』がリリースされますが、このタイトルに込めた思いを教えてください。

古内東子:本当になんとなくなんですが、『PURPLE』というタイトルがひらめいたんです。色から想像させられる手が届かない感じとか、大人の雰囲気とか、時に官能的だったり、高貴だったり、パープルという色が持っている複雑なイメージや響きがいつも気になっていたからだと思うんです。タイトルを決めてから曲を書いていったんですが、今回はとくにリレーションシップというか、男女の関係性を歌った曲が多いんです。出会いとか別れというよりは、恋に落ちている時のバラ色の気持ちだったり、距離を縮めたあとのブルーな感情だったりを書いているので、両方が混ざり合ってはじめて恋愛なんじゃないかなという意味も込めて、“PURPLE”なのかなと思って。

 今作の収録曲を聴いて、“恋愛って普遍的なもの”とあらためて感じさせられました。

古内東子:自分自身、もちろん大人にはなってきているんですけども、決してどんどん成熟していっているわけではなくて、恋愛に関してもわからないことだらけです。人を好きになる思いというのは消えていくものではないし、今のところまだまだ探求中という感じですね。

 今作に関しては“等身大の古内東子”という部分を強く感じたんですが。

古内東子:曲に実年齢が追いついてきたというか(笑)。自分ではいつも等身大だと思っているんですけれども、やっぱりデビュー当時は「えぇ? ハタチなんですか!?」みたいなことをすごく言われました。背伸びして書いていたつもりはなかったけど、大人になりたいとか、大人へのあこがれというのは今と比べるとあったのかもしれません。昔の曲と今の曲でそんなにギャップがないのは、背伸びをしていたからなのかもしれないですね。

 1曲目の「LOVE SONGS」、2曲目の「PURPLE」からは、そういった古内さんの世界観がバッと伝わってきました。と今作の世界観が見事に融合していて、一気にテーマに飛び込むような印象を受けました。

古内東子:「LOVE SONGS」という曲は、ちょっと変わった目線の歌で、シンガー・ソング・ライターの私が書いているという印象を受けると思うんですよね。私が私として書いているというか、それこそ等身大じゃないですけども。今回のアルバムを引っ張ってもらう曲でもあると思ったので、早い段階で1曲目にしたいなって。あと、ライヴで先行してワン・コーラスだけ歌ってたりもしたので、それを聴いてくれた人たちが、“あの歌だ”と思ってくれればいいなというのもありました。「PURPLE」はアルバムのタイトルにしていることもあって、全体のテーマを言い表しているというか。おっしゃる通り、「LOVE SONGS」と「PURPLE」には、これまでの世界観と今作の世界観のふたつがあるのかなと思うんです。だから、この2曲を最初に持ってきたというのはありますね。

 その「PURPLE」という曲は、どのような思いで書いていったのですか?

古内東子:もう「PURPLE」という曲をつくると決めてから書きました。普段は曲のタイトルを最後に決めたりすることが多くて、何かテーマがあってそれについて掘り下げて書くということはあんまりないんですよ。ただ、今回はアルバムのタイトル曲というのもあったし、「PURPLE」という曲を書きたいと思ったから、もう本当「PURPLE、PURPLE……」と思って書きました。とにかく複雑な色というのがあって、中間色のようなイメージがあったから、まずその中間ってなんだろうって考えて。感情だけで書いたというよりは、自分の中で頭を使ったところもちょっと多かったですね。

 4曲目の「映画を観よう」はポップなサウンドの中に、“楽しさ”、“切なさ”、“強さ”、“弱さ”という様々な感情が混ざり合った作品ですね。

古内東子:タイトル通り、何気なくおウチで一緒に映画を観るとか、そういう一場面です。とくに、知り合って間もなかったり、関係を構築していく間においては、いろいろなところが見えたりすると思うんです。たぶん映画館の暗い中で隣同士で観ているよりも、いろいろなことが見えるんじゃないかなって。リラックスしているのもあるし、まさにいろいろな感情が入り交じった曲ですね。おウチで映画を観るということが、相手のことをもっと知りたかったり、涙を見たかったり、距離を縮めていくというひとつのアイテムなのかなって。今はいい映画館ができてすごく快適なんですけども、席が広くなって快適になるほど距離は遠くなっていくというか。そんな矛盾を思って書いたりもしました。

 6曲目の「涙」は♪隠さない しまわない♪というリリックに強い決意を感じます。

古内東子:曲調もそうですし、思いの強さというか、迫り来るような意思の強さみたいなものを感じてもらえるかなと思います。取り方はいろいろだと思うんですけど、静かに熱い曲なんですよね(笑)。言葉がすごくシンプルで、置くようにメロディもあるので、強い曲になったかなと思います。

 9曲目の「Boyfriend」はリリックを後押しするようなサウンドと随所に散りばめられたクラップ音が特徴的ですが、どういったところからアイデアが浮かんできたんですか?

古内東子:自分でデモをしっかりつくってたんですけれども、なんかいろいろ探っているうちに(笑)。「PURPLE」とか「Boyfriend」とかは、わりと私のアレンジがそのまま生かされています。たとえば、「Boyfriend」の場合は、作曲の時点でもうクラップ音が鳴ってた。歌詞の世界観は今回のアルバムの中で唯一何もはじまってない男女の歌なんだけども、その緊張感をサウンドでも伝えたいなって思いました。

 10曲目の「スロウビート」はKREVAさんとのコラボレーション作品ですが、この作品が今作に与えた影響などはありますか?

古内東子:「スロウビート」は、河野さんにアレンジで参加してもらったんですけども、今までは作詞して作曲して、あとはプロにやってもらおうみたいな考えだったんです。けれど、曲をつくって、しかもサウンドが頭に浮かんでいるのであれば、それをちゃんと伝えようって思うようになりました。そこまで責任を持ってやる楽しさを教えてもらったかなと思います。でも、全然やってないんですけどね(笑)。KREVA君は、“曲をつくった人のサウンドなんだから伝えたほうが一番いいのに”みたいなことはいつも言ってくれていて。だから、この曲では“こうしてほしい”、“ここは変えないでほしい”ということをちゃんと言えたかなと思いますね。

 12曲目の「太陽」はライヴの最後に聴きたくなるような曲ですね。

古内東子:私、そういうのはあんまり考えてないんですよね(笑)。ライヴは弾き語りでやることがすごく多くて、毎回アルバムとは曲順を変えざるを得ない感じなので。これを必ず最後に歌いますという曲は特にないんです。どっちかというと、アルバムの最後に置いてみて、はじめてライヴの最後がいいのかなと思わせる曲かもしれませんね。

 このアルバム全体で、“未来”を予感させる作品になりましたね。

古内東子:未来をすごく感じさせるんだけど、底抜けに明るくないこの感じが私らしいかな(笑)。なんでしょうね。誰しもハッピーエンドがいいと思うんですけど、歌詞やサウンド、メロディのバランスで切なくなってしまうという。そのバランスかなと思います。全部が明るいとなんかちょっと恥ずかしいところがあって(笑)。じんわり感じる未来、じんわり感じる幸せが、私らしいかなと自分でも思うんですけど。

 今作をどのように楽しんでほしいですか?

古内東子:いろいろなことを思って、いろいろな相手が鏡になって、自分のことがわかったり、成長していったり、自分や相手のいいところ、悪いところが見えていったり、人との距離を少しずつ縮めていく中での、いろいろな感情を歌っているので、このアルバムを聴きながら、自分の気持ちや相手との関係を深めていってほしいです。

 全体的に女性目線の曲になっているかと思いますが、男性リスナーにはどんなことを感じ取ってほしいですか?

古内東子:たまたま私は女性なので女性目線ですけど、女にしかわからない気持ちというのは今回そんなにないと思います。それはもしかしたら時代のせいもあるのかもしれないですけど、男性だって傷つくし、女性が傷つけることもある。男性が女性を癒してあげる場面もあるでしょうし、その逆もある。そうやって考えると、一人称は女性、私っていう言葉ですけど、垣根を取り払って聴いてもらえると思うんですよね。

 DVDには「PURPLE」のミュージック・ビデオが収録されていますが、こちらはどんな内容になっていますか?

古内東子:わりとイメージ・ビデオですね(笑)。最初オフショット的なところからから入って、そのまま本編に入っていく感じです。

 今年、新たに挑戦してみたいことなどはありますか?

古内東子:ライヴに関しては、やったことがない場所でやってみたいですね。あんまり野外とかはやったことがないので、日暮れ時のいいシチュエーションとか。夏の暑い日にガンガンというのはないかもしれないですけど。いろいろな場所があると思うので、みんながやっているところでなくても構わないし。あとはいろいろな出会いがあればいいかなと思います。

 最後にファンへのメッセージをお願いします。

古内東子:さほど間が空かずにもう1枚できました。私自身は大人ならではの作品だとはそれほど思ってないので、ぜひ酸いも甘いもかみわけた大人の方だけでなく、かみわけ中(笑)の若い方にも聴いてほしいです。


INTERVIEW:Hiroyasu Wakana, Atsushi Saneshige


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