片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ

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L to R:安藤亘(g)、東慎也(g)、片山尚志(vo)、大橋吐夢(b)、河嶋大樹(dr)

70年代ロックンロールやブルース・ロックの影響を受けた、激しいビート・ロックを奏でる京都在住バンド、片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ。4月14日に、1年半ぶりのフル・アルバム『サカサマデアル』をリリース!


 あらためてバンド結成のいきさつを教えてください。

片山尚志:バンドはずっと組みたいと思っていたんですが、なかなか仲間が集まらずに、弾き語りをやっていたんです。そんな時、大学でギターの安藤と知り合いまして。彼が「仲間がいなくてかわいそうだから」と言って、メンバーを集めてくれたんです(笑)。その後、結成当初のメンバーのうち、何人かが就職を機に抜けてしまって、後輩だった東、大橋、河嶋の3人が加入して、今のメンバーになったんです。

 音楽活動を仕事として意識しはじめたのは、いつ頃から?

片山尚志:大学を出る時に、今の制作チームと知り合ったんですが、音楽業界のことを何も知らなかった僕らにイチからいろいろな知識を教えてくれたんです。その彼らと一緒に、“音楽で挑戦してみたい!”と思って。だから、彼らとはインディーズの頃からずっと一緒にやっているんです。

 片山さんは今でも、ソロで弾き語りをやられていますね。

片山尚志:スケジュールなどで、バンドには迷惑をかけないように、という範囲でですが。自分にとって“ひとりでステージに立つ”ということは、すごく大事なことで、修行のようなものなんです。だから、ちょっとバンドとはモチベーションがちがうところがありますね。曲づくりに関しても、チャンネルが2つある感じで、明確な基準があるわけじゃないんですけど、“これはバンドに合わないな”とか、どこかで差別化を図っている…いや、図っていたんです、このアルバムまでは。

 と言うのは?

片山尚志:ちょうど1年くらい前に弾き語りのライヴをして、そこにメンバーが観にきたんですが、ライヴ終わった後に「“今日、新曲です”ってやったのがすごくいいから、あとでみんなでアレンジしよう」って言ってきて。それがきっかけで、できたのが先行シングルにもなった「地球最期の朝がきて」なんです。今までチャンネルが2つあったのが、これを機にようやくアウトプットがひとつになりましたね。

 すると今作は、制作アプローチの面で、前作と変わった部分があると。

片山尚志:ありますね。ビート・ロックの曲は、ほぼリフだけがある状態でスタジオに入って、“いっせーのせっ!”でやって、それから歌をのせる…っていうのがいつものやり方で、そういう曲が最初にでき上がるんです。ただ、今回もまた、そういう曲だけっていうのも面白くないなと思って。“もうひと味、何かを加えたいな”というところから、僕がひとりでつくったものをバンド・アレンジするとか、アプローチの方法のひとつとして、そういうトライが今回はありました。

 サウンドづくりに関してはいかがですか?

片山尚志:リフ・ロックというか、スピードのある曲は、僕の歌のキーにマックスがあるとしたら、そのキーを少し下げて、声色や声質をコントロールできる状態でテイクを重ねました。演奏にしても、歌にしても、それによって技術的に難しくなる部分はあったんですけど、それによってギターの手癖の感じも変わるし、今までと聴こえ方がちがうと思います。90年代後半から00年代にかけてロックンロール・リヴァイバルがあって、ザ・リバティーンズとか今も残っているイギリスで流行ったバンドは必ずそういうつくり方をどこかでしているんです。だから、00年代のロックンロールをインプットしたものの結果というか、それを今までの片山ブレイカーズと組み合わせて、00年代のビート・ロックを総括するようなイメージですね。

 今までのサウンドに変化を加えようと思ったきっかけは?

片山尚志:きっかけというか、インディーズの頃から毎作、どこかにそういうサプライズを入れているんです。バンドって他人の集合体なので、長く続けるっていうのはすごく難しいと思うんです。だけど、僕らが続けてやってこれているのは、そうやって毎回、自分たちでトライして、新しいスパイスを取り入れて、今まで踏み入れたことのない実験をアルバムのどこかでやっているからだと思うんです。今回は前作から期間が空いた分、そのジャンプ・アップが激しかったっていうのはあると思います。前から知っている人は、“バンドの感じが変わったなって”思うかもしれないんですが、それでビックリしてもらえたらいいなと。

 詞は哲学的なものからノリ任せのものまで幅広いんですが、主にどんなところからインスピレーションを?

片山尚志:基本的に曲が先にでき上がるので、曲からっていうのがほとんどですね。メッセージ性があるものは、歌詞のどこか1カ所が刺さればいいと思って書いています。あとは言葉遊びというか、音がこのリズムにのって面白いとか、日本語が持つ独特の語感を感じて高揚感が出てくるようなものを選んで書いています。

 “言葉遊び”の曲は、今作でいうと「やっさい恵方」や「輩に穴」などがそうですね。

片山尚志:「輩に穴」は7年前からあった曲で、今の5人になってはじめてできた曲なんです。ずっとライヴでやっていたんですけど、録音していなかったことに誰も気づいていなくって。というのも、昔、無料配信のダウンロードで配信したことがあったんで。今回、誰かが「録音してないんじゃない?」って言い出して、「言われてみれば…」って(笑)。こう考えてみると、昔から語感での言葉遊びは、やっていたんですね。「やっさい恵方」も、ホントに語感だけというか。日々の喧噪とか、あわただしい感じで進んでいく街の様子を言葉遊びで表現できたらと思って書いた曲です。

 歌詞がすごくユニークだなと感じました。

片山尚志:前奏のコーラスの♪やっさい e-hou e-hou♪っていうのも、打ち込みでつくっていて、元ネタはキザイア・ジョーンズなんです。みんなに否定されるんですけど(笑)。ガット・ギターでファンクをやるみたいなイメージでつくって、スタジオでメンバーに聴かせたら大爆笑して。で、歌詞を書く時に♪e-hou♪のところにいろいろと当て字をしていって、“恵方巻の恵方でいいやん”ってなったんです。そこから「やっさい恵方」っていう言葉から受けるイメージと、跳ねもののリズムにのっかった曲を殺さずに気持ちよく転がっていく言葉を選んで書いていきました。最後に鬼門を指す“うしとら”という言葉が出てくるんですが、恵方と鬼門を指すっていうところから“京都の街中を表している”っていうのを、歌詞を読んでニヤッとしてもらえたら、いいかなって。

 “恵方”という発想が、関西ならではという感じを受けるんですが、関西を拠点にしているというのをバンドのカラーとして意識している部分はあるんですか?

片山尚志:今回収録している「キョート・トリッパー」という曲は、あえて意識して書きましたが、普段から特にそういう部分を出していこうとは思っていないです。普通に京都で、自分たちのペースで暮らしながら曲を書いているので、自然とにじみ出ている部分はあると思いますけど。だから、「やっさい恵方」にしても、周りにそういうネタが偶然落ちていただけなんです。ただ、それを面白いと感じてもらえるなら、そういうネタは今後も拾っていきたいなと思います。

 「キョート・トリッパー」を、京都を意識して書こうと思ったのはなぜ?

片山尚志:歌詞に出てくる♪丸 竹 夷 二 押 御池♪っていうのは、京都人なら小学生からおじちゃん、おばちゃんまで、みんなが歌える通り名の歌なんですけど“それをネタに書いてくれて”ってメンバーにずっと前から言われていたんです。で、東京に来た時に見た、JRの「そうだ、京都に行こう」っていうCMを見た時に“これハマるかな”と思って曲にハメてみたら、結構イケたんで京都の街を歩くような曲を書いてみました。中に出てくる言葉は、一見意味がないように思えるんですけど、京都の人が読むとどこを歩いているかがわかるんですよ。“あ、ここ戻橋だ”とか、“桜を歌ってるから八坂さんかな”といった具合に。そういうイメージを持って、これも歌詞を見てニヤッとしてもらえたらいいなって思います。

 「地球最期の朝がきて」は、アルバム・ヴァージョンとして収録されていますが、先行シングルとはどんなちがいが?

片山尚志:これはアウトロがついているか、いないかだけのちがいで、中身自体は何も変わっていません。ただ、このアルバムの最後にあって、アウトロがあることによって、シングルで聴くのと聴こえ方が変わってくると思います。メッセージを前面に出した曲っていうのは、バンドとして新しい到達点だったし、僕を含めたメンバー全員が非常に苦労したレコーディングを乗り越えて生まれた曲なので、ひとりでも多くの人に聴いてもらえたらなと。

 苦労したというのは、どんな点で?

片山尚志:主に技術的な面ですね。大音量で“ドーン!”というのが得意なので、そういうのは割と簡単にできるんですが、この曲に関しては最後まで温度を上げないようにしていて。今までにやったことがないので、これがなかなか難しかったですね。ライヴでは少しちがうアレンジでやっているんですけど、音源は歌詞が一番届く形、作品をつくろうという意識でつくったので、歌も演奏も最後まで温度を上げずに淡々とやっているんです。それこそ歌は、ホントに小さい部屋で、誰かに語りかけるような感じで歌ったし。演奏もメンバーがずっと我慢して弾いているのが見て取れて。ベーシック・トラックのOKテイクができた時には、感動しました。

 今作のリリース・ツアーが5月5日からはじまりますが。

片山尚志:今作はメンバー全員、“作品づくりをするぞ”という感覚でやっていて。だから、ライヴでは、またちがったアレンジ、もう一段階成長した形になっていると思います。今までのバリバリにのれるロッキンな部分もあるし、新しい到達点も見てもらえるかなと。ライヴを観てもらえたら、一発でイメージが逆さまになるというか、新しいイメージがふくらむと思うので、ぜひライヴを観てもらいたいなと思います。アルバムも、“今までの片山ブレイカーズ”というものをすごく見つめ直して、片山ブレイカーズのできる最大限のもの、新しいものを生み出せたと思います。結果、すごくいい作品ができたし、リード曲の「地球最期の朝がきて」は、ずっと聴いてもらいたい、たくさんの人に聴いてもらいたい曲なので、聴いてみてください。


INTERVIEW:Shinji Takemura


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●ALBUM
04.14 On Sale
『サカサマデアル』
片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ
YCCL-10007
¥2,625(tax in)

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