冨田ラボ

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冨田ラボの4年振り、ニュー・アルバムが完成! 豪華アーティストたちが参加したサード・アルバム『Shipahead』が、2月3日にリリース!


 ファースト・アルバム『Shipbuilding』(’03年)、セカンド・アルバム『Shiplaunching』(’06年)、そして今回のサード・アルバム『Shipahead』。”Shipシリーズ”3部作がついに完結、というわけですね。

冨田ラボ:まあ、そういうことになりますね(笑)。“楽曲ごとにゲスト・ヴォーカルを迎え入れて、1枚のアルバムにする”っていうのが基本的なコンセプトなんですけど、3部作と考えるとわかりやすいというか。

 前作『Shiplaunching』は80年代のテイストが強かったと思うのですが、今回のアルバムにはどんな方向性があったんですか?

冨田ラボ:2枚目のアルバムは、おっしゃるように80’sのテイストがかなり入ってるんですが、それは最初から意図していたことではないんですよ。当時の日本のシーンを振り返ってみると、かなりR&Bに寄ってたと思うんです。そのジャンルをよく聴いてたわけではないんですが、ヴォーカリストとして魅力のある人が多かったんですよね、そういうところには。彼女たち、彼らの歌をもっとちがうサウンドで聴いてみたいと思ったときに、僕の志向として80年代前半のブラコン(ブラック・コンテンポラリー)はどうだろう、と。

 その結果として、80’sテイストのアルバムに仕上がった。

冨田ラボ:そうなんです。1枚目はもっと自分のベーシックに近いところというか、70年代のテイストに寄っていて。で、今回のアルバムの特徴としては、個性的なシンガーが参加してくれてるってことだと思うんです。以前は“あまりにも個性が強いシンガーに歌ってもらうと、アルバムのトータリティが崩れるんじゃないか”と思ってたところがあるんですね、無意識のうちに。でも、2枚のアルバムをつくり上げたことで“どんなシンガーが来ても、自分の音楽は揺るがない”っていう確信ができた。だから今回は、声を聴いただけで“あの人だ”ってわかる方々に躊躇(ちゅうちょ)せずオファーさせてもらいました。

 佐野元春さん、秦 基博さん、安藤裕子さん、吉田美奈子さんなど、本当に強い個性を持った方ばかりで。もちろん冨田ラボの作品として成立してるし、全体を流れるムードみたいなもの感じるんですよね。アルバムのトータリティをつくり上げるうえで、何か意識していたことはありますか?

冨田ラボ:うーん、そこまで考えていたわけではないんですけど。ただ、作詞をしていただく方に対して、数曲で「これは自分の中で、シリアスな曲です」という話はさせてもらいました。ポップスを聴いてシリアスな気持ちになりたいっていう人はいないだろうし(笑)、僕自身も深刻な気分のアルバムをつくりたいわけじゃない。けれども“今って、無責任に大騒ぎすればいいって場合ではないよな”とは思うわけで。

 そうですよね。

冨田ラボ:自分の年齢を考えても、世の中を見ていても、どこかでシリアスな視点を持たざるを得ないというか。何て言うか、サウンドの中にその時期の流行を取り入れるっていうのは好きじゃないんですよ。それをやると早い時期に風化してしまうと思うので。だけどメンタリティとしては、そのときの思いを込めるべきだと思うんですよね、ある程度は。どの時代に身を置いていた人の音楽なのかがわかるようにする、というか。それくらいですかね、トータリティということで言えば。

 現在のメンタリティを込めつつ、流行に左右されない質の高さを維持する。まさにポップスの理想だと思います。もちろん、クオリティーのキープには細心の注意を払ってらっしゃるんですよね。

冨田ラボ:よくわからないですけどね、自分では。ただ、何から何までプロフェッショナルで固めるっていうのは、ちょっとちがうかなって思ってるんです。それをやると聴いてる人から遠くなるというか、絵に描いた餅みたいになっちゃうんじゃないかなって。あくまでも僕の考え方ですけどね、それは。たとえば佐野(元春)さんに歌ってもらった曲(「ペドロ〜消防士と潜水夫 feat. 佐野元春」)でいえば、アルゼンチンのロック・バンドを勝手にイメージしてるんですよ。基本的にはロックのフォーマットなんだけど、どこかに南米の匂いが入ってきちゃう。そういう風に、ちょっと変わったことは入れるようにしてるんですよね。

 優れたポップスなんだけど、何か気になるところがある。確かにそれって、冨田ラボの特徴かも。

冨田ラボ:そういう風に感じてもらえるとうれしいです。僕らができることって、何年経っても意味があるものをつくり続けることだけなんですよね。その瞬間だけ楽しめるような音楽もいいけど、そればっかりになっちゃうのはマズイ。長く、豊かな気持ちなれる音楽をつくっていきたいと思いますね、これからも。


INTERVIEW:Tomoyuki Mori


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