杉ちゃん&鉄平
L to R:杉浦哲郎, 岡田鉄平
さまざまな音楽とクラシックの融合を試みるピアノとヴァイオリンのクラシック・デュオ、杉ちゃん&鉄平。三味線や和太鼓、笙など、日本伝統の楽器とクラシックをマッシュアップした最新作『クラシック侍』を7月28日にリリース!
岡田鉄平:僕は母親がピアノの教師をやっていて、自宅がピアノ教室だったんです。その流れでピアノとヴァイオリンを習いはじめました。ただ、やっていて「ピアノは向いていない」と言われてしまって(笑)。そこからはヴァイオリンに専念しました。
杉浦哲郎:僕は…もうあまり覚えてないな(笑)。多分、自分の意志だったと思うけど。
杉浦哲郎:僕は音楽をはじめたのはピアノがきっかけだったんですけど、クラシック畑の人間ではなくて。本格的な音楽活動は、20歳くらいの時にロック・バンドでキーボードとしてデビューして、そこからアレンジの仕事なんかもするようになったんです。
杉浦哲郎:僕はモロにYMO世代ですね。今もそうですけど、教授(坂本龍一)が、クラシックといろいろなジャンルの音楽との架け橋的な存在じゃないですか。そういうところに憧れていて。
岡田鉄平:音楽活動はクラシックだけですね。それ以外での活動は今までしたことがないです。
岡田鉄平:いや、クラシックは聴かなくて、ダンス系とかですね。ジュリアナが流行った15歳くらいの時にテクノにハマって、ハッピーハードコア(ハードコアテクノのひとつ)とかマニアックなダンス・ミュージックばかり聴くようになって。クラシックとは真逆の音楽だから好きになったのかもしれないですね。
岡田鉄平:特に意識しているわけではないんですけど、仕事でやっているからプライベートでは避けているんだと思います。クラシックを聴くと、どうしても勉強している気分になっちゃうんですよ(笑)。
岡田鉄平:クラシックにはもともとそういう要素があって、モーツァルトがそのはしりなんですけど、冗談音楽でつくられている曲もあるんです。実際、クラシックをやっている人にはそういう心を持っている人が多くて、楽屋では結構みんなでネタを考えたり、見せあったりしています。だから、それを人前でやるかどうかっていう差なんです。
杉浦哲郎:鉄平と仕事の現場で会って話をしているうちに、お互いお笑いが好きっていうことと、冗談音楽のネタを持っているっていうことが判明して。“高貴なものを落とす”ってお笑いのひとつのベーシックなスタイルじゃないですか。クラシックって日本では高貴というか、敷居が高いイメージがあるので、それを人前でやってみようかって話になって。それで実際にやってみたら予想以上にウケたので、調子にのった感じです(笑)。表立ってのデュオ結成というのは、テレビへの出演が機だったんですけど、実際には結成前から僕がお仕事させていただいているワハハ本舗のショーの合間に、冗談音楽の披露はしていて。だから改めて“結成するぜ!”みたいな感じではなかったですね(笑)。自然な流れでというか。
杉浦哲郎:クラシックが誕生してからもっとも隆盛を極めた時期と、日本の江戸時代っていうのがちょうど重なっているんです。そのことを『江戸でピアノを』という本に評論家の方が書いていて。江戸時代の将軍15人とヨーロッパの作曲家15人を並列して書いているんですけど、そういう風な捉え方をしたことがなかったので、非常に面白いなと思って。その本を読むうちに、日本がもし鎖国をしていなかったら、日本の音楽界はこの時代からとんでもないことになっていたんじゃないかとイメージを掘り下げていったんです。今までにも尺八や琴でクラシックをカヴァーしている方はたくさんいるんですけど、日本の音階に絞っているものってないなと思って。というのも、西洋の音階って12個あるんですけど、日本の音階って基本的にミファラレシの5つしかないんです。その5つの音に絞り込んで、アプローチすると斬新で面白いものができるんじゃないかと考えていきました。厳密に言うと接続音とかでミファラレシ以外の音も使っているので、絞りきれてはいないんですけど、それでも今までにないものができたかなと思います。
杉浦哲郎:重視したと言うか、大変だったのがチューニングですね。雅楽の楽器ってとても低いんですよ。ヴァイオリンはそこに合わせられるんですけど、ピアノをそこまで下げるのはちょっとキツくて。だから、こちらのレギュラーのチューニングでやっていただこうと思ったんですけど、そうすると今度は雅楽の方が大変なんですね。いろいろとカスタマイズをしなくてはならないみたいで。それと遊び感覚を持って、こちらの意図を理解した上で演奏していただかないと成立しないので、それらを含めてすべて承知してやっていただける方を探すのが大変でした。もともと雅楽の世界には明るくなかったこともありましたし。
岡田鉄平:奏法に関しても、ほとんどのクラシックの場合、ヴァイオリンにはビブラートがかかっているんですけど、雅楽の楽曲ではビブラートがかかっていないんです。そこを合わせるのが少し苦労したというか。もともと、バロック・ヴァイオリンにはビブラートをかけない奏法があって、それが身に付いていたので、努力してなんとかいけるようになりました。
杉浦哲郎:「日本舞曲第五番」かな。コンサートではじめてやったんですけど、「ハンガリー舞曲」の非常に印象的なメロディが、日本の音階にすると原型をとどめなくなるということを発見して。お客さんやスタッフからも「印象が強い」と言われた曲なんです。そういうところから今作のコンセプトがスタートした部分もあるので、あえて選ぶとすればこの曲ですね。
岡田鉄平:僕は「無伴奏「一揆」パルティータ」と「じゃじゃまる協奏曲」です。僕ゲーマーでファミコンが好きなんですよ。そのイメージでこの2曲は編曲していて(笑)。ファミコンに時代物のゲームってそれほど多くなかったので、自分の好きなジャンルとマッシュアップできてうれしかったです。
杉浦哲郎:尺八って、パッと聴くと低めのフルートみたいに聴こえるんですよ。僕らは目の前で演奏してもらってるからわかっているんですけど。だから、演奏する方に尺八の“ブフォ”っていう独特の音をあえて多めに入れていただくように、嫌がられるくらいお願いしました(笑)。それと録ってみて、笙の音がヴァイオリンと似ていることに気づいて。こちらもデフォルメというか、特徴がわざと出るように演奏していただいています。
岡田鉄平:擬音はほとんどヴァイオリンを使ってやっていて、その音の音域まで調べたり、かなり研究して似せるように努力しているんです。だから、たまに似過ぎていて、SEを差し込んでいるんじゃないかって思われる時があるので、あえて弦の音をガーッと入れて、ヴァイオリンでやっていることを主張する時はありますね。
杉浦哲郎:さっきの尺八の“ブフォ”の話と一緒ですね(笑)。どこまでやるか、似せるかっていうのは、こういうCDをつくる時の難しさだなって、いつも思います。
岡田鉄平:いや、あれはさすがに(笑)。
杉浦哲郎:あれがヴァイオリンでできたらすごいんですけどね(笑)。
杉浦哲郎:クラシックをベースとしたエンタテインメント・ショーなので、観て、聴いて、楽しんでいただいて、結果的に音楽の勉強にもなると思います。
岡田鉄平:クラシックといっても僕らのは笑えるクラシックと言うか、肩の力を抜いて楽しめると思います。クラシックをやっている方や聴いている方も、ちがった考え方や見方が生まれてくると思うので、ぜひ観てもらいたいです。
杉浦哲郎:そうですね。トークはもちろん、映像を使ったり、衣装替えをしたり、演出は常に考えています。今回もレビュー・ショーのような、あっという間の2時間になると思います。
杉浦哲郎:8割くらい。今回はブームということもありますし、新企画でなぞかけをやろうかなと考えています。もともと杉鉄でやっていること自体、なぞかけみたいなところがありますし。お客さんにお題を出してもらって、その場でなぞかけを解くっていうのを考えているので、楽しみにしていてください。
杉浦哲郎:クラシックを普段あまり聴かなくても、嫌いな人はいないと思うんです。あまり聴かないのは、クラシックに対して、敷居が高いとか、ちょっと緊張するみたいな先入観を持ってしまっているというか。そういう先入観を僕らのアルバムやコンサートで壊していきたいと思っているので、ぜひアルバムを聴いて、コンサートを観てください。それをきっかけにクラシックの原曲にも興味を持ってもらえたら、さらにうれしいですね。
岡田鉄平:今回のアルバムは、日本の和音の響きも入っていて、そこが日本人の心をくすぐる部分があると思います。すごく癒しの音楽になると思うので、ぜひ聴いてください。
INTERVIEW:Shinji Takemura
●ALBUM
07.28 On Sale
『クラシック侍』
杉ちゃん&鉄平
AVCA-29821
¥2,500(tax in)
★杉ちゃん&鉄平
http://www.jeo.jp/sugitetsu/(PC・携帯)
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