河村隆一
ひとりのヴォーカリストとして、飽くなき挑戦を続ける河村隆一が、3月9日にニュー・アルバム『THE VOICE』をリリース! 洋楽のスタンダード・ナンバーをカヴァーした本作は、彼のヴォーカリストとしての資質の高さを示す作品に!!
河村隆一:このコンサートには2つの意味合いがあって、ひとつは肉体的な挑戦意欲というか、僕にとって今がヴォーカリストとしての第1期黄金期を迎えているのではないかと感じているんです。ここ5年くらい、“呼吸をするように歌う”っていうことがわかってきて、今なら100曲を楽しみながら自信を持って歌えるんじゃないかと思って。それが自分自身に対する挑戦。もうひとつは、来てくれるファンに対する挑戦でもあって。僕がソロ活動を通じて一番やりたいことは“スタンダードをつくること”なんです。今回、コンサートをやるにあたって、オリジナル曲の数を数えてみたら120曲くらいあったんですけど、そこから100曲となると、ほぼ全部網羅することになるし、当然時間は長くなる。その中で、“長いな”とか“飽きたな”とか感じさせないように、観に来てくれた人たちが“本当に良い曲ばかりで、あっという間だったね”って思えるようなものにできるかどうかっていうチャレンジでもあるんです。
河村隆一:LUNA SEAの復活はそことはあまり関係なく、’07年に東京ドームで一夜限りのライヴとして『GOD BLESS YOU 〜One Night Déjàvu〜』をやったんですけど、その時に再会したメンバーの音がすごくカッコよくて。こんなメンバーと一緒にやれるなんて幸せだなって心から思えたんです。みんなも同じように、他のメンバーに対するリスペクトや思いが深まっていく中で、“絶対にやろうね”という言葉とともに予定されていたのが、昨年のワールド・ツアーだったんです。
河村隆一:収録曲の選曲はだいぶ前からはじめて。そこで半年くらい時間をかけて、実際に録りはじめたのは昨年の10月くらいからですね。そこで5曲くらい録って、残りは年明けの8日くらいから数日で仕上げた感じです。今回、自分が求めていたものが“歌の息吹”で。細かいところを気にするよりも、バックの楽器と指揮者の方と一緒に“せーの”で録って、感動できるものがあれば、それをOKテイクにしたいという気持ちが強かったんです。実際、1曲に対して2テイクくらいしか歌っていなくて、“どっちがいい?”みたいな感じだったので、そういう意味では“等身大の河村隆一”を聴いてもらえる作品になったと思います。
河村隆一:次の作品をどうしようかという話し合いをしていく中で、レコード会社のA&Rの方から“次は洋楽のカヴァーはどう?”っていう提案があって。それも、ただの洋楽カヴァーではなく、日本人の心に染みる“わびさび”を伝えられる作品にしたいと。そのアイデアに僕もひかれて、方向性が決まっていきました。
河村隆一:マイクとの距離感、それと想像する空間の大きさですね。直線的な細い声、明るい声を出す時は、狭い空間を想像して、豊かな太い声、抜けの遅い音を出す時は、大きな会場を想像して歌いました。ただ、アレンジによって、それが合う、合わないというのもあるので、その辺はすごくバランスよく録れたなと自分でも思っています。
河村隆一:今回、エンジニアの方と話して、改めてわかったことなんですけど、僕の声は使えるマイクが少ないんです。声の抜けが早い…単純に言うと声が大きいので、ひずみが出やすいんです。だから、使用するマイクはヴィンテージのマイクが多くて67を中心に49とかを使いました(※編注:67、49…マイクの種類)。マイクって離れて歌うと声が細く録音されるんですけど、それをさらに下の倍音を伸ばしながら、アゴを落として、腹で歌うようにして。そうやって体を流しながらオペラのように歌うと、すごく豊かでありながら聴きやすい歌が録れるというのがわかったので、マイクとの距離をすごく計算しながら録りました。
河村隆一:いや、先ほども言ったように、ほとんど“せーの”の一発録りだったので、短い時間の中で密度を濃くといった感じでした。バックと一緒に一発でやる楽しさは、誰かが良くても誰かがダメだったら全部ダメになるところで。歌は2テイク目がいいけど、バックの音は1テイク目の方がいいっていうこともあり得る。そういう意味では指揮者の方を中心に、気持ちをひとつにするというか、本当にチームで音を出しているという感じがありました。あとはレコーディングってだいたいドンカマ(※編注:スタジオなどで使用されるリズムマシン)が走ることが多いんですけど、今回そういう楽曲が少なかったので、ドンカマのないレコーディングっていうのも楽しかったです。ビートルズとか、昔の人たちは一発録りをしていたはずなので、これが音楽の本来の姿というか、自然な形なんだと思います。
河村隆一:今の時代、アルバムだと60分を越えるのは当たり前で、僕もそういう作品をたくさんつくってきたんですけど、レコードやカセットの時代ってもっと短かったなと。音楽があっという間に終わってしまう感覚、もう1度聴きたいと思わせる感覚って、実はすごく大事なんじゃないかなと思って。曲順にもそういうのが必要だと思ったので、飽きないこと、そしてコードの流れも含めてなんですけど、次の曲のイントロが流れてくる感じというか。新しい風がヒューッと吹いてくるような、心地よいそよ風を感じるようなイントロの入り方、それはコード感だったり、リズム感だったりするんですけど、そういうものを念頭に決めました。だから、すごくあっという間に聴き終わってしまうアルバムになったと思います。
河村隆一:単純に曲順で考えた時に、いろんな終わり方があっていいんじゃないかという思いからつくった部分もあるし、ジャケット写真を撮りにNYまで行ったんですけど、すごく良い画が撮れたので、LP版のジャケットをつくろうとか、この映像をDVDに入れたいとか、作品のクオリティ的に波及していった部分もあります。そうやってアルバムを聴いたり、ジャケットやDVDを見てもらうと、ひとつひとつに意味があると思うし、終わり方でアルバムの印象も随分変わってくると思うので、その辺も楽しんでいただけたらうれしいです。
河村隆一:僕の中で“スタンダード=ジャズ”という気持ちがあって、最初はジャズのアルバムにしようかと考えていたんです。ジャズと言ってもマニアックな意味ではなくて、ポップスやロックが生まれる前は、ジャズが花形の音楽だったので。結局アルバムはジャズにこだわらず、いろんなジャンルからという形になったんですけど、ジャズのアルバムならNYで撮影できたらいいなと考えていたので、その案をそのまま活かしました。ちょうどLUNA SEAのワールド・ツアーをやっていた時で、そのすき間にドイツからNYにひとりで渡って、5日間撮影をした後にLAに飛びました。
河村隆一:時差を考えると、それほどでもないんです。ドイツからNY、NYからLAで、だんだんと時差が深まっていったので、ドイツから日本に戻ってLAに飛ぶよりは、むしろ楽だったんじゃないかな。撮影は事前にロケハンをして、ここで撮りましょうっていう感じじゃなくて、自分の遊びに行きたいところに行って、同行してもらったカメラマンに撮ってもらったので、“河村隆一の日常”を切り取ったスナップになっています。
河村隆一:オフショットの“満腹感”かな。NYの駅のカフェみたいなところに行って、みんなでお茶しようっていうことになったんですけど、その前に韓国料理を食べに行っていて、量がものすごくて本当にみんな満腹になっていたんです。で、カフェで飲み物だけ頼んだら、お菓子が付いてきて…。みんなが食べないから、僕が必死に周りの人に勧めるっていうのが最後のシーンなんですけど、あの僕はかなり素ですね。あそこまで素の僕は今までにないと思います(笑)。
河村隆一:ファンの方は、僕の声をマイクやスピーカーなどの機材を通して聴いていて、本当の“生”の声を聴く機会がほとんどないんじゃないかと思って。音楽ってなんだろうって考えた時に、僕の声を一番愛してくれているファンに、“生”の声を届けるべきなんじゃないかっていうところがはじまりでした。もうひとつ、このコンサートには意味があって、“音楽の力で森をつくろう”ということで、収益の一部を植林活動に寄付していて、大きな金額ではないんですが、ずっと続けていきたいなと思っています。
河村隆一:基本的にソロでの活動が中心ですが、LUNA SEAのRYUICHIになれば、LUNA SEAの活動を重んじます。どちらも真剣勝負には変わりないけど、選手の質がちがうというか、河村隆一は“マラソン”で、LUNA SEAは“短距離走”っていう感じで。LUNA SEAで得た物を河村隆一に還元し、河村隆一でまたチャレンジをする。河村隆一で得た自信をLUNA SEAに還元するってことをキャッチボールしていけるのが一番良いのかなと思っていて。ゆくゆくは河村隆一もLUNA SEAもインターナショナルなアーティストとして、活躍したい。たとえばヨーロッパを河村隆一が回ったら、LUNA SEAでは全米ツアーをやって、次の年にはその逆をやっているとか。そういうことを実現することがひとつの夢で、その夢に向かって必要なこと、そして足りないものを明確にして、一歩一歩踏み出していくのが重要だと思っています。
河村隆一:そうですね。今はとにかく河村隆一として武道館で100曲やることも、『THE VOICE』で名曲と渡り合って“VS世界基準”で戦うことも、その経験が次のLUNA SEAに活かされると思うし。僕は河村隆一で、こういったチャレンジをずっと続けていきたいと思っているし、スタンダード・ナンバー、ポップス、ロックをつくっていけるアーティストとして、これからもやっていきたいと思っています。一方でLUNA SEAとして、今回『LUNA SEA』というインディーズ盤を再録したんですけど、本当に“当時、僕たちが聴いていた洋楽”というか、単純に言うと音がすごく良くて。邦楽では出し切れなかった音の厚みをしっかりと聴いてもらえるアルバムができたので、この『THE VOICE』と『LUNA SEA』、カヴァーと、両方を聴いてもらうとヴォーカル・セッションも含めて“人間・河村隆一”の厚みを感じてもらえると思います。音楽を通して、自分たちの人生、日常、感じていること、悩んでいること、望んでいること、夢、いろんなものをみんなに聴いてほしいなと思っていて。今回の『THE VOICE』というアルバムも、本当に今までのアルバムの中で1、2を争う良い歌が歌えたと思っているので、ぜひチェックしてください。そしてLUNA SEAのセルフ・カヴァー・アルバムもよろしくお願いします。
INTERVIEW:Shinji Takemura
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★河村隆一
http://avexnet.or.jp/ryuichi/(PC・携帯)
スタンダードナンバーを完全に自分の歌として昇華した内容だったね!
一曲ごとに声の表現が変わっている点にも驚き!
やっぱり隆一は無敵のシンガーだね!