武藤昭平

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昨年スタートした、勝手にしやがれのリーダー・武藤昭平のソロ・プロジェクト。その集大成とも言えるソロ・アルバム『トゥーペア』が、2月10日リリース! 多彩な顔ぶれをゲストに迎え、“ヴォーカリスト・武藤昭平”の出した答えがここに!!


 “ひとりのヴォーカルとして立ち返る”ことを目的としてスタートさせた武藤さんのソロ・プロジェクトですが、その中で見えてきたこととは?

武藤昭平:改めて感じたのは、ヴォーカルやギターなど、1個1個の音を録音する深みみたいなものかな。前からやっていることなんだけど、今回はちがう視点でやって、こうやってレコードができるんだっていうのがいろいろと見えてきて、いろんな可能性があるなと。特に最近は便利な世の中になっていて、実際に会わなくてもレコーディングしたデータをメールでやり取りして完成させられるじゃないですか。そういうのがすごく不思議というか、新鮮でしたね。

 そういう新しい形で組み上げていく段階で、“熱量”といった部分ではいかがですか?

武藤昭平:もちろん勝手にしやがれは、そういう熱を大切にしているし、自分も昔の好きなレコードとか、その場の空気感を楽しむことはあるんだけど、今の人たちはどうなんだろうって思うんですよ。それが俺の中でもちょっとわからなくなっていて。と言うのも、今ってパソコンでダウンロードして、プレイヤーに移して聴くっていう人が増えていると思うんですよね。こっちはマスタリングの段階で、曲間を何秒くらい取れば次の曲が活きるだろうというところまで考えて作業してるけど、シャッフルして聴いたり、頭出しして聴いたりするとそんなの関係なくなってしまうじゃないですか。そういう時代に、この空気感がいいんだよって言ってること自体がナンセンスなのかなって。

 時代の流れで、ちょっとあやふやになってきてしまった部分があると。

武藤昭平:その作品のどこにこだわりを持たせるかっていうところがちょっとね。結局はいい曲をつくって、プレイしている人間とそれを求めるリスナーがいれば、それでいいのかなと思っていて。だから勝手にしやがれの時からそうなんだけど、基本的に“いい演奏”というよりも“悪くない演奏”だったらOKにしているんです。プレイヤーの立場からしたら、気になることは細かいところがいっぱい出てくるんだけど、リスナーがそんなところまで気にするかって考えたら、絶対気にしないと思うんですよ(笑)。それよりも、曲自体がいいか悪いかを重要視するべきで。あんまり、そういうところにこだわるとシェアもちっぽけになってしまうと思うし。だったら、プレイの最終型を見据えて、細かいミスを気にするより、“悪くなかったね、今の。じゃあOK”っていう感じで。まぁ、そのジャッジも甘いんですけどね(笑)。

サウンドづくりという面ではいかがでしょう? 重視した点というのは?

武藤昭平:サウンドづくりというか楽曲のつくり方なんだけど、「ワインレッドの心」以外は全部新曲で、それをつくる時の目標が“昔からあるようなスタンダードな曲ばかりにしたい”というもので。だから、コードなんかもシンプルにしているんですよ。その代わり、演奏力とかヴォーカルとかによほどの説得力がないと何もなくなってしまうので、そういうところで勝負しましたね。誰にでもつくれる曲なんだけど、俺がやることによって全然ちがうものになるっていう勝負をしようと。だから、楽曲づくりとしては、どこかで聴くき覚えがあるようなシンプルかつキャッチーなものを心がけました。

 表題曲の「トゥーペア」は、ポーカーでは2番目に弱い“トゥーペア”で勝負に出るところに、“開き直った男らしさ”を感じたんですが。

武藤昭平:沢田研二さんみたいに美貌と歌、そして日本を代表するスター、あそこまでそろえば“ロイヤルストレートフラッシュ”って言えるんですけど、いかんせん俺なんで(笑)。やっぱ庶民の味方ですから。どちらかと言うと、きれいごとを固めて人に未来と希望を持たせる楽曲をつくるより、酒場でクダを巻きながら頑張ろうとしてる人たちの目線が好きだし、そういう曲を書く方が得意なんで。トム・ウェイツやチャールズ・ブコウスキーのように、人の見せたくない裏側をわざとさらけ出しながらも、人生をあきらめずに頑張る視点が好きなんですよ。で、たまたまポーカーの役で“トゥーペア”っていうのがポンッとひらめいて。“トゥーペア、だけど勝つ!”みたいな(笑)。

 「プリティ・ビーナス」は、武藤さんが歌う女性目線の歌詞というのがすごく新鮮ですが、女性目線にしようと思ったのは?

武藤昭平:基本的に曲は自然と降りてくるんだけど、この曲はピストルズみたいな雰囲気のパンクが頭の中で鳴っていて。でも、そんな荒々しい演奏に男らしい歌詞をのせても、すごく真面目じゃないですか。それってシャレがないなと思った時に、あのサウンドで♪あたしが〜♪ってはじまったら面白いじゃないかなとひらめいて。“バカだな〜”みたいな(笑)。そういうところのシャレですよね。

 FPMがミックスを手がけた「エグジット」も新鮮ですよね。

武藤昭平:田中さんはもともと飲み友達で、古い付き合いなんですよ。勝手にしやがれや武藤×ウエノでイベントに参加した時にも一緒になったことがちょこちょこあって、飲みながら“なんか一緒にやりたいよね”っていう話はしていたんです。で、今回ソロでアルバムを出すことになって、これは田中さんとやれるチャンスだなってことで声をかけて、念願がかなったという感じですね。ミックスに関しては、ウエノくんと俺だけで録音した、ミックスもしてない録り下ろしのデータを丸投げして、もう田中さんにお任せという感じで。そうしたら、俺のギターが一部しか入ってなかったんですけどね(笑)。で、最終のミックスに入る前に田中さんと飲む機会があって、“この日からミックスに入るから”って言うから、“この際ギターはいいから、すいませんけどヴォーカルだけは残してください”って(笑)。仕上がりに関しては、もうさすがのひと言ですよね。この曲がこうなるんだみたいな。

 このアルバムのリリースで、ソロ活動は一旦お休みに入るんですか?

武藤昭平:そうですね。アルバムとして、次の武藤ソロ第2弾とかは、今のところ考えてないです。でも、今回のソロ活動は、勝手にしやがれではできない、武藤×ウエノや俺ひとりでの弾き語りというところの延長線上にあって、つながっている部分があるので、そういう意味ではその活動をやめるつもりはないし、今年も続けていく予定です。

 ソロ活動を経たことで、勝手にしやがれのアイデアが広がった部分はありますか?

武藤昭平:今までにない勝手にしやがれをできるだろうっていうのは、すごく感じますね。とりあえず、シフト的には今はもう勝手にしやがれに移っていて、新曲や頭の中で練り直している段階なので、楽しみにしていてもらいたいです。勝手にしやがれや俺のことを知らない人は、武藤昭平というひとりの人間をこのアルバムで感じてもらって、その人間がすごくとんがったら(笑)、勝手にしやがれみたいなのをやっているってことを知ってもらえれば。今回は受け皿が広い、いろんな人がいろんな形で聴ける視野の広いアルバムができたと思うので、喰わず嫌いじゃなく、一度試してみてください。


INTERVIEW:Shinji Takemura


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●ALBUM
02.10 On Sale
『トゥーペア』
武藤昭平
NFCD-27256
¥3,100(tax in)

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